空間除菌システムの開発

プルガティオ株式会社

  • 取材:種藤 潤

 日本にある世界トップクラスの技術・技能—。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。

 新型コロナウイルス(以下、コロナ)の感染対策を契機に、除菌にまつわる機器が急速に広まった。アルコールや次亜塩素酸などの原料を用いた多様なシステムが存在するが、今号で紹介するのは、「水」というある種究極の安全性を持つ原料を用いながら、高い除菌効果を発揮する、世界で唯一の空間除菌システムだ。

プルガティオが販売する空間除菌デバイス『Devirus

プルガティオが販売する空間除菌デバイス『Devirus AC』。左が本体で、右がデバイスで使用する純水を生成する装置

 『Devirus AC(デヴィルスエーシー)』は、塩類や有機物を除外した「純水」を投入して使用する加湿装置でありながら、その純水を超微細で濃密な「ウルトラマイクロミスト」にすることで、ウイルス減少効果を発揮するデバイスだ。

 まず上部の挿入口から純水を入れると、最下部のタンクに流れ込み、そこでフロートセンサーにより一定の水位を制御しながら、ネブライザー(液体を霧状にする装置)により0.05μm(マイクロメーター)から10μmまで大小入り混じったミスト(霧)を作り出す。それらはタンク上部に浮遊するが、上部に設置されたセパレーターにより、0.05μmから0.5μmという超微細なミスト(霧)だけを選び出し、ブロアーファンによりタンクの更なる上部に押し出され、最上部の噴霧口から噴出する。

 スイッチをオンにすると数秒で噴霧はスタート。光の加減によっては見えるものの、一見するとほぼ確認できないほど微細だ。『Devirus AC』を販売するプルガティオ株式会社の森久康彦代表取締役に促され、噴霧口に眼鏡のレンズを当ててみたら、曇らない。粒子が細かすぎて水滴として残らないのだ。

『Devirus  AC』の外部パネルを取り除くと内部構造が見える。純水を投入し使用してみると、最上部から入った純粋(左)は最下部の特殊な装置で超微粒子の状態となり(右)、再び上部の噴霧部から外部に噴出される

『Devirus AC』の外部パネルを取り除くと内部構造が見える。純水を投入し使用してみると、最上部から入った純粋(左)は最下部の特殊な装置で超微粒子の状態となり(右)、再び上部の噴霧部から外部に噴出される

超微細な霧の純水が 空間のウイルスを99.9%除去

 「ウルトラマイクロミスト」を生成することで、大きく二つの効果を発揮する。

 ひとつは、「ブラウン運動」と呼ばれる物理現象を起こすことで、空気中に短時間で広く拡散し、それでいて濃密な状態で長時間浮遊する特徴を持つ。取材時に訪れた40㎡ほどのオフィス空間であれば、数分噴霧するだけで、約1時間は浮遊した状態が維持できる。作業効率が高いのだ。

 もうひとつは、純水を超微粒な状態で漂わせることで、空気中のウイルスを99.9%減少できることだ。これを可能にするには、粒子の細かさと同時に、不純物のない純水である条件が揃う必要がある。実験では、水道水で噴霧してもウイルス減少の効果が見られなかったという。

 いうまでもなく「純水」は人体にほぼ危険性がない。その原料を用いて、高いウイルス除去効果を発揮できるのは、「ウルトラマイクロミスト」を生成できるこの『Devirus AC』以外に存在しない。世界唯一かつ究極の安全を持つ除菌システムなのだ。

噴霧された純水に眼鏡を当てても曇らない。それだけ粒子が細かい証拠だという

噴霧された純水に眼鏡を当てても曇らない。それだけ粒子が細かい証拠だという

偶然の発見により 水で除菌できるシステムに

 この除菌システムは、2023年7月に特許出願し、本格的に販売を開始したばかりだ。その開発の歴史は、約10年前に遡る。

 当初は食品工場のカビを減少させるための除菌システムの開発からスタート。食品を扱う性質上、噴霧する液体は安全性を確保するため、食品添加物のひとつである亜塩素酸水を選択した。一方で、噴霧器を自社で開発を重ね、「ウルトラマイクロミスト」を生み出す『Devirus AC』を完成させ、高いカビ抑制効果を実証した。

 2019年に「株式会社空間除菌」を創設(2023年3月に現社名のプルガティオ株式会社に変更)。奇しくもコロナ感染拡大がはじまったこともあり、食品工場や飲食店を中心に、医療施設、オフィス、学校、イベント施設等でも導入が広まっていった。

 一定の手応えを感じつつも、森久代表は亜塩素酸水以外の製剤ができないかと考えはじめていた。

 「私はもっと人体への安全性を高められる原料があると考えていました。それを探すなかで、偶然、純水という存在に出会いました」

 大手建設会社の安藤ハザマと共同開発する過程で、天然アロマ素材のティートゥリーを用いた原料で効果を検証。そのとき「おまけ」で実施した純水の実験で、偶然、ウイルスの減少効果があることが判明した。

『Devirus  AC』の実験結果。蒸留水=純水を使用すると99.9%ウイルスを除去したことが証明されている。筑波大学と安藤ハザマの共同論文から引用(提供:プルガティオ)

『Devirus AC』の実験結果。蒸留水=純水を使用すると99.9%ウイルスを除去したことが証明されている。筑波大学と安藤ハザマの共同論文から引用(提供:プルガティオ)

水なら世界各地で確保可能 低価格で裾野を広げたい

 原料が水であることのもう一つのメリットは、原材料のコストが低いこと、そして、世界中どこでも手に入ることだ。この特徴を生かし、世界各国で『Devirus AC』を広めてきたいと、森久代表は意気込む。

 「原料費が低コストですから、課題はデバイスの費用。できるだけランニングコストを抑えるために、レンタル利用を提案しています。そうすればメンテナンスも対応しやすくなるというメリットもある。導入のハードルを下げ、世界各地で導入してほしい。そのための販売パートナーを募集中です」

 一方、国内に目をやると、コロナの感染対策もひと段落。だが、森久代表は感染対策は継続する必要があると言い切る。

 「現在、新型コロナはインフルエンザと同類となりましたが、厚生労働省の統計では、コロナによる死者は現在も増加しています。社会的な対策が緩和される今、自己責任での継続的な感染対策が必要だと私は考えます。今年の夏はインフルエンザも猛威を振るいましたから、ウイルス全般の対策を心がけてほしい。『Devirus AC』は加湿器でもあり、これからの季節、乾燥を抑えることでもウイルス対策になります。特に感染拡大しやすい保育園や医療機関などで、導入が広がってほしいですね」

プルガティオの森久康彦代表取締役。ちなみに社名はラテン語で「浄化」を意味する

プルガティオの森久康彦代表取締役。ちなみに社名はラテン語で「浄化」を意味する

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